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倉山満「国民が知らない上皇の日本史」書評(という名の感想)

投稿日:2018年9月16日 更新日:


どうも、MOTOYAです。

今回はタイトルにもありますように、倉山満先生の「国民が知らない上皇の日本史」の書評です。

こちらになります。

書評というと恐れ多いですね、実際としては感想ぐらいなものになります。

よろしくお願いします。

なお、以下、倉山満「国民が知らない上皇の日本史」を本書と呼称し、特段の注釈がない限り、頁数はすべて本書の頁数を示します。

皇室は先例を重視する

平成28年8月、今上陛下が玉音放送をなさったとき、まさか自分が生きているうちに上皇をお目にかけることになるとは思いませんでした。

高校時代、日本史を選択していた僕にとって、上皇とは完全に歴史上のお話なのです。

こんなことを言っていいのかわかりませんが、ラッキーなのかもしれないと。

とはいえ、上皇は歴史上のお話と言いながら、その実、上皇にまつわる歴史について、僕は明るくありません。

恥ずかしい話しだとは思うのですが。

この本の冒頭にもありますように、皇室は先例を重んじます(5頁)。

先例とは、歴史ですよね。

だから、上皇を語るには、まず歴史がわからないとダメだろうと。

そんなところにちょうどこの本が発売されたわけです。

光格上皇以来、200年ぶりの譲位。

上皇が、自分の生きている時代に誕生なされる。

これはいい機会だなと。

そうして、僕は本書を手に取るのでした。

上皇=院政ができる、わけではない

本書は360頁ほど。

先ほども、皇室は先例を重視するとのことですが、直近の譲位は200年前の光格上皇です。

本書でも1章分を割いて光格上皇の例を説明しています。

それだけではなく、なんと古代から江戸時代にかけてまで、皇室とその周辺の歴史を、上皇という切り口で俯瞰しています。

正直申し上げて、知らないことばかりでした。

おわりに、の章にも、「おそらく知らないことだらけだったのではないでしょうか(343頁)」と書いてあり、見透かされているようでドキリとしました。

一応、高校時代、日本史を選択しておりましたが、上皇についての知識を問われるならば、やはり院政のイメージです。白河、鳥羽、後白河の三者はセットで覚えます。

なので、上皇=院政、というイメージでもあります。

しかし、本書はそれを否定します。

本書によると、上皇であれば必ず院政ができる、とは限らないといいます。

なお、「天皇をやめて上皇になれば即座に院政ができる」とカン違いする人もいます。では、上皇が複数いた場合は、どうなるのでしょう。皇室の家長は一人だけです。院政は、治天の君だけに許された特権なのです。(201-202頁)

上皇かつ治天の君(皇室の家長)であれば、院政ができると。

じゃあ治天の君とは誰?どうやって決まるの?という疑問がおきますよね。

ちなみに、治天の君になる方法というものはありません。
たとえば、日本国憲法では首相の決め方を詳細に明記していますが、皇室の家長の決め方などは、どこにも書いてありません。皇室の家長は本来、天皇に決まっているから、わざわざ書く必要がないのです。大化の改新まで、天皇は死ぬまで天皇であり続けるのが、常例でした。また、嵯峨上皇の時に「皇室の家長は天皇である」と確定しました。上皇が天皇の父や祖父や兄であっても、現職天皇が家長なのです、建前としては。(202頁)

なんと、方法はどこにも書いてない、と。

治天の君は、すなわち、現職天皇です。

じゃあ上皇が治天の君になることなんてありえないんじゃないか?

いやいや、この「建前としては」がポイントですね。

この建前は一度も変わったことがないはずですが、現実は違います。嵯峨上皇からして現職天皇より人望と政治力があったので、誰もが皇室の家長は嵯峨上皇だと見なしていました。逆に政争に破れて退位した三条上皇を皇室の家長と見なす人はいませんでした。(202頁)

いくら現職天皇いえども、上皇のほうが人望と政治力をもつ場合、上皇のほうが実質的な立場が上がってしまうということになるのですね。

その場合、院政が生じるということになるのでしょう。

もっとも、嵯峨上皇自身は、政治的な権力は手放した上で、基本的には文化的な権威として君臨、そして、いざというときだけ介入する、という姿勢をなさっていたようです(160頁)。なので、あくまで普段の政治は当時の天皇である淳和天皇におまかせします、という形で現職天皇をたてます。

この場合は、あくまで治天の君は淳和天皇だという建前が守られます。

つまり、嵯峨上皇は存在して、しかも治天の君とみなされるほど人望と政治力を持ち合わせていたけど、院政はしないということになります。

まとめるならこうなるでしょう。

天皇が治天の君、これが建前。ちなみに治天の君は1人だけ。
しかし、上皇が治天の君(とみなされるぐらい人望や政治力をもつ)の場合、院政が生じうる。
ただし、その場合でも、嵯峨上皇のように、あくまで建前を守る場合がある。

端折っていうなら、上皇=院政とは限らない、ということになります。

なるほど…、そうだったのか。

譲位は嘉例

ここまで、光格上皇と嵯峨上皇のお名前がでてきました。もちろん、本書には、ほかにもいろんな上皇の歴史が記されています。

全部取り上げるのは本が売れなくなるので、印象的なお話をひとつ。

譲位は嘉例である、ということです。

嘉例、つまり、めでたい先例ということですね。

普段は嘉例なんてことばを使わないのですが、なかなかいいことばですね。

さて、少し話が逸れそうなので戻しますと。

これ、どういうことか。

それ(譲位=筆者注)が、したくてもできない状態におかれてしまったのが、戦国時代でした。つまり、譲位することは嘉例です。社会が安定して、豊かになるから譲位できるのです。(298頁)

例えば、後土御門天皇です。
ご在位中、明応の政変という事件が起こります。

そんな明応二(一四九三)年、将軍義稙が在位四年にして管領の細川政元に廃位されてしまいました。
(中略)
後土御門天皇は、自分が任命した将軍を陪臣が勝手に廃したことに怒り、抗議のために譲位しようと決意します。しかし、譲位を行うためにはお金がいります。
結局、譲位しようと思えば、細川政元に頼らなければいけないという矛盾がありました。これでは、譲位できません。
(中略)
後土御門天皇は生涯をかけ、五度にわたって譲位を試みましたが、すべて失敗しました。その時々の政治状況が許さなかったのですが、やはりお金が無かったからです。
(286-288頁)

後土御門天皇は、管領の細川政元に抗議するために譲位したい。
でもお金がない。
じゃあ細川政元に頼るか?

それはできないですよね。

しかもそのあと、5回も譲位を試みるも、お金がないためにできない、という屈辱的な状態に置かれます。

後土御門天皇、後柏原天皇、後奈良天皇、正親町天皇まで、先帝が崩御されてから、次の天皇が践祚する、という状態が続きます。

平安時代は崩御の直前に譲位が常例でしたが、後柏原天皇の場合は、ほぼ亡くなる直前の即位です。平安時代と戦国時代と、どちらが皇室にとって嘉例(良い先例)だったでしょうか。当時の公家社会全体の敗北感は、説明するまでもないでしょう。(288頁)

戦国時代。
戦乱が続き不安定な世の中とは、そういうことなのでしょう。

ようやく時の天皇が譲位できるのは、正親町天皇の治世、秀吉が天下人として乱世を終わらせたときです。

この年、大正十四(一五八六)年十一月に、後陽成天皇への譲位がなされました。本当は誠仁親王への譲位の予定だったのですが七月に急死したので、親王の第一皇子で天皇の孫に当たる和仁親王(後に周仁)に承継されたのです。
(中略)
後花園天皇譲位以来、百二十年近く行われなかった譲位がやっと復活しました。正親町天皇は豊臣政権を天下人として認め、自らの譲位でもって、戦国を終わらせたのです。(298頁)

それぐらい世の中は不安定で、貧しかった、ということなのでしょう。

逆にいえば、譲位ができるということは、それだけ世の中が平和であり、豊かである、ということの証左なのだと。

この指摘はなかなか感慨深いですね。

まさに現代、光格上皇以来200年ぶりの譲位が実現しようとしているわけですから。

参考文献

倉山満「国民が知らない上皇の日本史」祥伝社(2018)

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