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書評

上念司著「経済で読み解く 大東亜戦争 「ジオ・エコノミクス」で日米の開戦動機を解明する」を読んで【書評】

投稿日:2018年10月30日 更新日:


どうも、MOTOYAです。

今回はあの経済評論家、上念司さんの著書、「経済で読み解く 大東亜戦争 「ジオ・エコノミクス」で日米の開戦動機を解明する」を読みましたので、書評を書いてみたいと思います。

表紙はこんな感じです。

有権者は経済に強い関心を持っている

いかなる世論調査でも、期待する政策の1位、2位を争うのは経済政策です。

あるいは、医療年金、という意見も多いです。

医療年金も、究極的にはおカネの問題なので、広い意味では経済政策の一部と考えて良いでしょう。

景気が悪いと、おカネがないですから、医療年金に回すおカネも限られます。

医療年金をなんとかしてほしい、ということは、景気をなんとかしてほしい、ということと同義です。

そう考えると、有権者はとにかく経済をなんとかしてほしいと思っているわけです。

それこそ、わが国はバブル崩壊以降、ずっと不況だ、不況だと言われ続けていました。

そんな期待の中から生まれたのが第二次安倍内閣です。

安倍さんは、まずは経済、三本の矢だ、と宣言して政権の座につきました。

有権者は経済政策に強い関心を寄せているものと思われます。

景気が悪くなると、極端な思想がもてはやされる

それぐらい、経済政策というのはわれわれの生活に密着しているということです。

じゃあ、経済、おカネを通じて世の中を見てみようと。

おカネというモノサシを使って歴史を見てみようと考えた方がいます。

それが上念司さんです。

それが「経済で読み解く 大東亜戦争」なのですね。

大東亜戦争についてはさまざまな検証や考察がなされていることと思います。

右左を問わず、です。

でも、おカネという観点から考察した人はそんなに多くないんじゃないでしょうか。

上念さんは次のような仮説をたてています。

「経済的な停滞は人々の心にトラウマを刻みます。今、「ロスト・ジェネレーション」と言われている世代の人たちは、社会に出たときから日本経済が停滞しており、あまりいい思いをしていません。将来的な見通しがつかなくなると、人々は不安を感じ、何かに縋ろうとします。景気がある程度良くて、仕事が忙しければ誰も見向きもしない”極端な思想”が、不況になるとまるで救世主のごとくもてはやされるようになるのです。(17ページ)」と。

要は、みんな景気が悪いと不安になって、極端な思想に救済を求めるようになる、ということです。

景気を悪化させる政策を繰り返す政府

ちょっと実際に歴史を見ながら検証してみましょう。

第一次世界大戦後、日本は景気が悪くなります。

戦争特需がなくなってしまうので当然です。

さらに、追い打ちをかけるように関東大震災が発生します。

景気がさらに悪くなります。

そこで、山本権兵衛がうまいこととりなしました。

具体的には、モラトリアムや震災手形損失補償など。

特に震災手形損失補償は事実上の金融緩和です。

景気は良くなります。

しかし、のちの若槻礼次郎内閣で、片岡直温大蔵大臣が失言をしたために金融危機が発生します。

震災手形の引受けを延長するか、という議論をしているときに、片岡大臣が「渡辺銀行が破綻した」と言ってしまいます。

その結果、取り付け騒ぎが起きます。

景気が悪くなります。

結局、田中義一内閣で高橋是清大蔵大臣が、窓口にお札を積み上げることで収拾させます。

ほかにも、金融危機に対応するために、金融緩和も実施します。

景気が良くなります。

しかし、後続の浜口雄幸内閣で井上準之助大蔵大臣が金輸出を解禁してしまいます。

要は、市場のカネを回収する行為です。

しかも、運が悪いことに、ウォール街の大暴落の翌日に行ってしまいました。

日本でも株価が暴落します。

金融危機が発生します。

景気は悪くなります。

結局、犬養毅内閣で高橋是清大蔵大臣が就任するとすぐに金本位制から離脱します。

そしてさらに、日銀直接引き受けも決断します。

要は、金融緩和です。

景気は良くなります。

しかし、高橋大臣は、2・26事件で殺されます。

後任の馬場鍈一は、悪性インフレなのに、カネを刷りまくってしまい、ますますインフレを加速させてしまいます。

景気は悪くなります。

追い詰められた国民は絶望的な選択肢を選んだ

ちょっと雑かもしれませんが、第一次世界大戦以降の経済政策を並べてみました。

政府は、景気を良くする政策と悪くする政策を繰り返します。

景気が安定しないので、国民は不安を抱えます。

誰かなんとかしてくれないか。

そこで出てくるのが近衛文麿なわけです。

端的に言えば、盧溝橋事件を拡大。
さらに日独伊三国同盟を締結。
そして、日米交渉をぐちゃぐちゃにして政権をぶん投げる有様。

なんでこうなったかと言えば、経済政策の失敗なわけです。

経済政策で失敗する。

景気が悪くなる。

国民は生活不安を抱える。

誰か解決してくれないかと思うようになる。

近衛文麿のような人が出てくる。

ソ連、米国、軍部が悪い?むしろつけ込まれるスキをつくってしまったほうが問題

もちろん、ソ連の暗躍、米国の陰謀、軍部の思惑もあると思います。

でも、それが影響力を持つかどうかはわからないわけです。

景気が良くて、多くの人が仕事に励んで生活を向上させることに必死であれば、共産主義だとかそういうものに染まる必要がないわけです。

景気が悪くて、現状をどうにかしてほしい、と国民が願ってしまったから、その弱みにつけこむ勢力がでてきただけです。

じゃあどうすればいいかはもう自明でしょう。

景気を良くするしかないでしょう。

参考文献

上念司「経済で読み解く 大東亜戦争 「ジオ・エコノミクス」で日米の開戦動機を解明する」(KKベストセラーズ、2015)

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